高齢になると、若い頃のように朝までぐっすり眠れず、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く起きたりすることがあります。眠れない日が続くと、「年齢のせいなのか」「病院に行くべきなのか」と不安になりますよね。

本記事では、高齢者が眠れない原因、家でできる対策、受診を考えたいサイン、家族ができるサポートをまとめました。
高齢者が眠れないのはなぜ?加齢で睡眠は浅くなりやすい


高齢者が眠れない背景には、加齢による睡眠の変化があります。若い頃のように朝までぐっすり眠れず、夜中に何度も目が覚めたり、朝早く起きてしまったりする方は少なくありません。
ただし、「年を取ったから仕方ない」と決めつけるのも危険です。日中の眠気やふらつき、気分の落ち込みがある場合は、生活の質にも影響します。
夜中に目が覚める中途覚醒が増えやすい
高齢者に多い眠りの悩みが、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」です。布団に入って眠れても、深夜や明け方に目が覚め、そのまましばらく眠れない状態を指します。
入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)
高齢になると、深い眠りが減り、物音や尿意、室温の変化でも目が覚めやすくなります。夜間トイレの回数が増えている場合は、足元灯を置く、寝室からトイレまでの動線を片づけるなど、転倒対策もあわせて考えましょう。
朝早く目が覚める早朝覚醒が起こりやすい
高齢者の眠りでは、予定よりかなり早い時間に目が覚め、その後眠れなくなる「早朝覚醒」も起こりやすくなります。朝4時や5時に目が覚めてしまい、布団の中で時間だけが過ぎるような状態です。
早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)
早朝に目が覚めるだけで、日中に支障がなければ大きな問題とは限りません。とはいえ、昼間に強い眠気がある、気分が沈む、食欲が落ちるなどの変化がある場合は注意が必要です。起床時刻だけで判断せず、日中の過ごし方や体調もあわせて確認しましょう。
眠る時間が長すぎると、かえって眠りが浅くなる


「眠れないから早めに布団へ入る」という対策は、高齢者の不眠では逆効果になる場合があります。寝床で過ごす時間が長すぎると、眠っていない時間も増え、眠りが浅いと感じやすくなるためです。
床で過ごす時間は8時間未満に
たとえば、夜8時に布団へ入り、朝6時まで横になっていると、寝床で過ごす時間は10時間になります。実際の睡眠時間が6時間ほどなら、残りの時間は「眠れない」と感じる時間になりやすいです。



眠る時間を無理に増やすより、起きる時間を大きく崩さず、眠くなってから寝床へ入るほうが、睡眠のリズムを整えやすくなります。
高齢者が眠れないときに家でできる対策


高齢者の不眠は、生活リズムの乱れや昼寝の長さ、寝床で過ごす時間の長さが関係している場合があります。
いきなり薬に頼る前に、朝の光、昼寝の取り方、眠れないときの行動を見直してみましょう。毎日の習慣を少し整えるだけでも、夜の眠りやすさが変わることがあります。
朝に日光を浴びて生活リズムを整える
高齢者が夜に眠れないときは、朝の過ごし方を見直すことが大切です。朝に日光を浴びると、体内時計が整いやすくなり、夜に自然な眠気が出やすくなります。
朝、日光を浴びることで体内時計はリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整い、すっきり起きることができます。
朝起きたらカーテンを開ける、ベランダや庭に出る、近所を短く散歩するなど、無理のない方法から始めると続けやすいです。外に出るのが難しい日でも、窓際で明るい光を浴びるだけで生活リズムを整えるきっかけになります。
夜の眠りは、夜だけで作るものではありません。朝の光が、1日のリズムを合わせる合図になります。
昼寝は短めにして夕方以降の居眠りを避ける
高齢者が夜に眠れない場合、昼寝の長さや時間帯も見直したいポイントです。昼寝そのものが悪いわけではありませんが、長く眠りすぎたり、夕方以降にうとうとしたりすると、夜の寝つきに影響しやすくなります。
夕方、以降の居眠りは、高齢者の寝つきを悪くしたり、睡眠の維持を妨げる。
昼寝をするなら、昼食後から午後の早い時間までに短く済ませるのがよいでしょう。夕方に眠くなる場合は、軽く体を動かす、家族と電話で話す、明るい部屋で過ごすなど、夜まで起きていられる工夫が役立ちます。
眠れないまま寝床で考え込まない


眠れない夜に、布団の中で「早く寝なければ」と考え続けると、かえって目が冴えやすくなります。寝床で悩む時間が長くなるほど、布団に入ること自体が緊張につながる場合もあります。
眠れないときは、いったん寝室を離れ、照明を暗めにして静かに過ごしましょう。スマホやテレビは光や情報で脳が刺激されやすいため、避けたほうが無難です。



「眠ろう」と力を入れるより、眠気が戻るまで待つほうが、寝床を眠る場所として保ちやすくなります。
高齢者が眠れないときに見直したい寝室環境


生活リズムを整えても眠りにくい場合は、寝室の環境も確認しましょう。
高齢者は、暑さや寒さ、物音、寝具の違和感で目が覚めやすくなります。さらに、夜間トイレの回数が増えると、睡眠だけでなく転倒の心配も出てきます。
寝室の明るさ・音・温度を整える
高齢者が眠れないときは、寝室の明るさや音、温度を見直しましょう。部屋が明るすぎる、テレビをつけたまま寝る、室温が暑すぎる・寒すぎるといった環境は、眠りを浅くする原因になります。
寝る前は照明を少し落とし、テレビやラジオの音を控えめにします。夜中にトイレへ行く場合は、足元が見える程度の小さな明かりを使うと、まぶしさを抑えながら転倒対策にもなります。
室温は季節によって調整が必要です。暑さや寒さで目が覚める場合は、寝具を増やすだけでなく、エアコンや加湿器も無理のない範囲で使いましょう。寝室は、体が休むための場所です。静かで暗く、安心して横になれる環境を整えることが、眠りやすさにつながります。
枕やマットレスが合わないと寝つきにくい
寝室の環境を整えても眠りにくい場合は、枕やマットレスが体に合っているか確認しましょう。首や肩、腰に違和感があると、寝つきにくくなったり、夜中に目が覚めたりする原因になります。
高齢者は筋力や関節の状態が変わりやすく、若い頃から使っている寝具が合わなくなることもあります。枕が高すぎると首に負担がかかり、マットレスが硬すぎる・柔らかすぎると寝返りしにくくなる場合があります。
寝具を選ぶときは、「よく眠れる」といった効果だけで判断せず、横になったときに首や腰が楽か、寝返りしやすいかを確認することが大切です。眠れない原因が寝具だけとは限りませんが、体の違和感がある方は見直す価値があります。
夜間トイレに備えて転倒しにくい動線を作る
高齢者が夜中に目を覚ます理由のひとつに、トイレがあります。夜間に起きる回数が増えると、眠りが途切れるだけでなく、暗い室内を歩くことで転倒の心配も高まります。
寝室からトイレまでの通路には、床に置いた荷物や電源コード、めくれやすい敷物を置かないようにしましょう。足元灯を使う場合は、明るすぎないものを選ぶと、まぶしさで目が冴えるのを避けやすくなります。
また、寝る前の水分を極端に減らすのはおすすめできません。脱水の心配があるため、夜間頻尿が気になる場合は自己判断で我慢せず、かかりつけ医に相談すると安心です。



眠りの対策とあわせて、夜中に起きたときの安全も考えておきましょう。
高齢者の不眠で病院に相談したほうがよいサイン


高齢者の不眠は、生活習慣や寝室環境の見直しで軽くなる場合があります。
一方で、眠れない状態が長く続き、日中の体調や生活に影響している場合は、年齢のせいだけで済ませないほうがよいでしょう。ここでは、医療機関へ相談する目安をまとめました。
眠れない状態と日中の不調が続いている


高齢者が眠れないときは、夜の睡眠時間だけでなく、日中の様子も確認しましょう。夜中に目が覚めても、昼間に元気に過ごせているなら、すぐに深刻な不眠とは限りません。
一方で、眠れない状態が続き、日中に強い眠気やだるさ、集中力の低下、気分の落ち込みがある場合は注意が必要です。
日中に様々な不調が出現するようになります。倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など多岐にわたります。
高齢者本人は「年のせい」と我慢してしまうことがあります。家族は、睡眠時間だけでなく、昼間の表情、食欲、活動量、転びやすさの変化も見ておきましょう。
いびき・無呼吸・足のむずむずがある
高齢者が眠れない原因には、生活習慣だけでなく、睡眠中の呼吸や体の違和感が関係している場合もあります。とくに大きないびき、睡眠中に呼吸が止まる様子、足がむずむずして眠れない症状がある場合は、本人の努力だけで改善しにくいことがあります。
睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に呼吸が浅くなったり止まったりして、眠りが分断されます。本人は眠っているつもりでも、日中に強い眠気やだるさが残ることがあります。
また、足のむずむず感や不快感でじっとしていられない場合も、睡眠を妨げる原因になります。家族がいびきや無呼吸に気づいたときや、本人が足の違和感を繰り返し訴えるときは、内科や睡眠外来などで相談しましょう。
睡眠薬を自己判断で増やしている
眠れない日が続いても、睡眠薬を自己判断で増やすのは避けましょう。高齢者は薬の影響が残りやすく、翌朝のふらつきや転倒、日中の眠気につながる場合があります。
すでに睡眠薬を処方されている方は、「効きにくいから量を増やす」「家族の薬を飲む」といった使い方をしないことが大切です。薬の種類や量は、年齢、持病、ほかに飲んでいる薬との組み合わせを見て調整されます。
薬を飲んでも眠れない、朝にふらつく、日中にぼんやりする場合は、早めに医師や薬剤師へ相談しましょう。睡眠薬は、増やすよりも「合っているか」を見直すことが先です。
家族ができる高齢者の睡眠サポート


高齢の親が「眠れない」と悩んでいるとき、家族は生活リズムや寝室環境を一緒に見直す支えになります。
ただし、眠れないことを責めたり、無理に早寝をすすめたりすると、本人の負担が増える場合があります。睡眠の悩みは、本人の気持ちに寄り添いながら、生活の変化や体調を確認することが大切です。
眠れないことを責めず、生活の変化を一緒に確認する
高齢の親が眠れないときは、「昼寝をしすぎたからでしょ」「早く寝ればいいのに」と責める言い方は避けましょう。眠れない不安が強くなると、寝床に入ること自体がプレッシャーになる場合があります。
家族が確認したいのは、眠れない日が増えた背景です。日中の外出が減っていないか、夕方に居眠りしていないか、夜間トイレが増えていないか、薬が変わっていないかを一緒に見直します。
睡眠の悩みは、原因がひとつとは限りません。生活リズム、体調、寝室環境が少しずつ重なっていることもあります。親の話を聞きながら変化を整理すると、家庭でできる対策と受診すべきサインを判断しやすくなるでしょう。
夜間の転倒や体調変化に備えて見守り方法を考える


高齢者が眠れない状態になると、夜中に起きる回数が増えやすくなります。トイレや水分補給で室内を歩く機会が増えるため、家族は睡眠だけでなく、夜間の安全にも目を向けておきましょう。
まずは、寝室からトイレまでの通路を片づけ、足元灯を設置します。敷物のめくれ、電源コード、床に置いた荷物は、夜間の転倒につながりやすいので注意が必要です。
離れて暮らしている場合は、毎日の電話やメッセージだけでなく、見守り機器の利用も選択肢になります。親の生活を監視するというより、異変に早く気づくための備えです。眠れない日が続く親ほど、夜間の行動が増えるため、家族が無理なく確認できる仕組みを考えておくと安心です。
離れて暮らす親の夜間の様子が心配な方は、以下の見守り方法を整理した記事も参考にしてください。


改善しないときは受診に付き添う
生活リズムや寝室環境を見直しても眠れない状態が続く場合は、医療機関への相談を考えましょう。とくに、日中の強い眠気、ふらつき、気分の落ち込み、いびきや無呼吸がある場合は、本人だけで抱え込まないことが大切です。
受診するときは、家族が睡眠の様子をメモしておくと診察時に伝えやすくなります。たとえば、寝る時間、起きる時間、夜中に起きる回数、昼寝の長さ、日中の体調などです。
高齢者本人は、診察室で「まあ大丈夫です」と話してしまうこともあります。家族が付き添える場合は、普段の様子を補足すると、医師も生活全体を把握しやすくなるでしょう。



高齢者の眠れない悩みは、生活習慣だけでなく病気や薬の影響が関係することもあります。無理に我慢せず、必要なときは専門家に相談しましょう。
高齢者の睡眠に関するよくある質問
- 高齢者は何時間眠ればよいですか?
-
高齢者の睡眠時間は、長ければよいわけではありません。厚生労働省の睡眠情報では、シニア世代の睡眠時間について以下のように記載されています。
必要な睡眠時間は個人差がありますが、6時間程度が目安です。
ただし、睡眠時間だけで良し悪しを決める必要はありません。夜中に目が覚めても、日中に元気に過ごせているなら大きな問題とは限りません。
一方で、昼間に強い眠気がある、だるさが続く、気分が落ち込む、転びやすくなったなどの変化がある場合は、睡眠時間よりも日中の不調を重視して考えましょう。
- 高齢者が夜中に何度も起きるのは普通ですか?
-
高齢になると眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めることがあります。
夜中に起きる回数だけで判断するのではなく、日中の状態を見ることが大切です。昼間に元気に過ごせているなら、過度に心配しすぎる必要はありません。
一方で、日中の強い眠気、ふらつき、集中力の低下、気分の落ち込みがある場合は、睡眠の質が下がっている可能性があります。夜間トイレで起きる回数が多い場合も、転倒や持病の影響を含めて、かかりつけ医に相談しましょう。
- 昼寝はしないほうがよいですか?
-
昼寝を完全にやめる必要はありません。高齢者の場合、短い昼寝で頭がすっきりし、午後を過ごしやすくなることがあります。
夕方の居眠り防止には、昼食後から15時くらいの間での30分程度の短い昼寝や夕方の散歩や軽い運動が有効である。
昼寝をするなら、昼食後から午後の早い時間までに短く済ませましょう。夕方に眠くなる場合は、部屋を明るくする、軽く体を動かす、家族と会話するなど、夜まで起きていられる工夫が役立ちます。
昼寝は悪者ではありません。夜の睡眠を邪魔しない長さと時間帯に整えることが大切です。
- 眠れないときに睡眠薬を飲んでもよいですか?
-
眠れないからといって、自己判断で睡眠薬を飲み始めたり、量を増やしたりするのは避けましょう。高齢者は薬の影響が翌朝まで残りやすく、ふらつきや転倒、日中の眠気につながる場合があります。
依存性や認知機能障害の心配が少ない睡眠薬も開発されています。ただし、長期にわたって漫然と使い続けるのはよくありません。
すでに薬を処方されている場合でも、「効きにくいから増やす」「家族の薬を飲む」といった使い方は危険です。眠れない日が続く、朝にふらつく、日中にぼんやりする場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
まとめ|高齢者の眠れない悩みは生活リズムと受診目安を分けて考えよう


高齢者の睡眠は、若い頃より浅くなりやすく、夜中に目が覚めたり、朝早く起きたりすることがあります。まずは朝の日光、昼寝の長さ、寝床で過ごす時間、寝室環境を見直しましょう。
ただし、眠れない状態が続き、日中の強い眠気やふらつき、気分の落ち込みがある場合は注意が必要です。
とくに、高齢者は年齢のせいだけにしないようにしましょう。



親の睡眠について気になることがあれば、今回の記事の内容をかかりつけ医や睡眠外来へ相談する目安にしてください。

