高齢者は、のどの渇きに気づきにくく、本人が自覚しないまま水分不足になることがあります。トイレを気にして飲む量を控えたり、食事量の低下によって摂取する水分が減ったりするケースも少なくありません。
本記事では、高齢者に必要な水分量の目安や飲むタイミング、水分を取らないときの工夫、飲み物を選ぶ際の注意点について解説します。

とくに、親がしっかり水分補給しているか心配な方は、参考にしてみてください。
高齢者の水分補給量は1日どのくらい?


高齢者の水分補給では、1日にどのくらい飲めばよいのか迷う方も多いでしょう。必要な量は体格や食事内容、持病によって異なるため、飲み物だけでなく、食事から取る水分も含めて考える必要があります。
ここでは、高齢者に必要な水分量の目安と、量を考える際の注意点について解説します。
1日に必要な水分量の目安


高齢者が飲み物から取る水分量は、体重の2〜2.5%がひとつの目安です。体重50kgなら約1,000〜1,250mL、60kgなら約1,200〜1,500mLになります。
参考:頻尿の原因は?|国立長寿医療研究センター
ただし、暑い日や運動後、発熱時などは発汗によって必要量が増えます。反対に、心臓病や腎臓病で水分制限を受けている方は、一般的な目安ではなく医師の指示を優先してください。
食事に含まれる水分も必要量に含まれる
1日に必要な水分は、飲み物だけでなく、食事からも補っています。ご飯やみそ汁、煮物、果物、ヨーグルトなどにも水分が含まれるため、食事をきちんと取れているかも確認しましょう。
食事量が減ると、食べ物から補える水分も少なくなります。食欲が落ちている場合は、飲み物だけで必要量を補おうとせず、汁物や果物なども組み合わせてください。
持病や薬によって適切な水分量は異なる
心不全や腎臓病などがある方は、水分を取りすぎると体に負担がかかるため、医師から飲水量を指示されることがあります。一般的な目安をそのまま当てはめず、治療方針を優先してください。
また、利尿薬や一部の糖尿病治療薬を服用している場合は、尿量が増えて脱水につながる可能性があります。水分を増やしてよいかわからないときは、担当医や薬剤師に1日の目安を確認しましょう。
参考:熱中症と糖尿病|国立長寿医療研究センター
高齢者が水分不足になりやすい理由


高齢者は、のどの渇きに気づきにくいうえ、体内に蓄えられる水分量も少なくなります。トイレへの不安や食事量の減少が重なると、水分不足に陥る可能性がさらに高まります。
ここでは、高齢者が水分不足になりやすい主な理由について解説します。
のどの渇きを感じにくくなる
高齢になると、体内の水分が減っても、のどの渇きに気づきにくくなります。本人が「のどは渇いていない」と話していても、水分が足りているとは限りません。
のどが渇いてから飲むのではなく、起床後や食事時、入浴前後など、生活の区切りに合わせて水分を取る習慣が必要です。
体内に蓄えられる水分量が減少する


高齢になると筋肉量が減り、体内に蓄えられる水分量も少なくなります。筋肉は多くの水分を含むため、若い頃と比べて水分不足の影響を受けやすくなります。
暑い日や入浴後だけでなく、室内で過ごしているときも水分は失われます。のどの渇きを感じていなくても、決まった時間に少量ずつ飲んでください。
トイレを気にして水分を控える
頻尿や尿もれが気になる高齢者は、トイレへ行く回数を減らそうとして水分を控えることがあります。とくに、夜間の排尿や外出先でのトイレに不安がある場合は、意識的に飲む量を減らしている可能性があります。
水分を極端に控えると脱水につながります。頻尿や尿もれが続いている場合は、飲水量だけを減らさず、泌尿器科やかかりつけ医へ相談してください。
食事量の減少で摂取する水分も少なくなる
高齢者は、食欲の低下や噛む力・飲み込む力の衰えにより、食事量が少なくなることがあります。食事にはご飯、みそ汁、煮物、野菜、果物などに含まれる水分もあるため、食べる量が減ると、食事から取れる水分も減ってしまいます。
食欲が落ちているときは、飲み物だけでなく、汁物やゼリー、果物なども取り入れ、無理のない方法で水分を補ってください。
高齢者が水分を取らないときの工夫


高齢者が水分を取らないときは、一度に多く飲ませるより、生活の流れに合わせて少量ずつ勧める方法が取り入れやすいでしょう。本人の好みや飲み込みやすさに合わせて、飲み物以外から補う工夫も役立ちます。
ここでは、高齢者が無理なく水分を取りやすくする方法を紹介します。
起床後や食事など水分補給の時間を決める


水分補給を忘れやすい高齢者には、生活の流れに合わせて飲む時間を決める方法が向いています。起床後、朝昼晩の食事、入浴の前後、就寝前など、毎日の行動と組み合わせると習慣にしやすくなります。
家族が声をかける場合も、「たくさん飲んで」と伝えるより、食事や服薬のタイミングでコップを用意するほうが取り入れやすいでしょう。
夏場は水分補給に加えて、室温やエアコンの使用状況も確認しておきたいところです。離れて暮らす親の暑さ対策は、以下の記事で詳しく紹介しています。


一度に多く飲ませず少量ずつ勧める
一度に多くの水分を勧めると、飲み切れずに負担を感じる高齢者もいます。コップを小さくするなど、本人が飲みやすい量に分けて、回数を増やす方法を試してみてください。
ただし、むせたり飲み込みにくそうにしたりする場合は、無理に飲ませず、かかりつけ医へ相談してください。
本人が好む温度や飲み物を用意する
水やお茶を勧めても飲まない場合は、本人の好みに合っていない可能性があります。冷たい水を好む方もいれば、常温の麦茶や温かい白湯のほうが飲みやすい方もいるため、温度や味を変えて試してみてください。
甘みのある飲み物を好む場合でも、糖分を多く含む清涼飲料水ばかりに偏らないよう注意が必要です。本人が自分から手に取りやすいよう、いつも座る場所の近くに飲み物を置く方法もあります。
汁物や果物、水分補給ゼリーを活用する
飲み物だけでは十分に取れない場合は、みそ汁やスープ、果物、水分補給ゼリーなどを取り入れる方法があります。食事や間食と一緒に出せるため、飲み物を勧めても進まない方にも試しやすいでしょう。
ただし、汁物は塩分、果物やゼリーは糖分を多く含む場合があります。高血圧や糖尿病がある方は量に注意し、商品を選ぶときは栄養成分表示も確認してください。
食事中によくむせる、声がかすれるなどの変化がある場合は、自己判断で続けず、医師や言語聴覚士へ相談しましょう。
高齢者向けのゼリーについては、以下の記事で紹介しています。選び方や注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。


ウォーターサーバーで飲み物を用意しやすくする
ウォーターサーバーがあると、冷水をすぐに用意できます。重いペットボトルを持ち運ぶ負担も抑えられるので、高齢者の一人暮らしにも取り入れやすいでしょう。
ただし、ボトルを持ち上げて交換するタイプは、腕や腰に負担がかかる場合があります。足元でボトルを交換できるタイプや、水道水を補充して使う浄水型も確認してください。
温水を使う機種では、誤操作によるやけどにも注意が必要です。操作のわかりやすさ、温水ロック、本体の安定性、月額料金を比べ、本人が無理なく扱えるものを選びましょう。
離れて暮らす親が水分を取れているか心配な場合は、室温や生活反応を確認できる見守りセンサーも選択肢になります。


高齢者の水分補給で知っておきたい飲み物と注意点


高齢者の水分補給では、飲みやすさだけでなく、糖分や塩分、カフェインの量にも注意が必要です。また、尿の減少や口の乾燥などが見られる場合は、水分不足が進んでいる可能性があります。
ここでは、普段の水分補給に向く飲み物と、体調を確認する際の注意点について解説します。
水や麦茶を普段の水分補給にする
普段の水分補給には、水や麦茶が取り入れやすいでしょう。糖分をほとんど含まないため、食事中や入浴の前後、日中のこまめな水分補給に向いています。
本人が飲みやすい温度に調整し、手の届く場所に用意しておくと、飲む機会を増やせます。
ただし、心不全や腎臓病などで水分量を指示されている方は、一般的な目安ではなく、医師から受けている指示を優先してください。
コーヒーや緑茶は飲む量と時間に注意する
コーヒーや緑茶も水分として摂取できますが、カフェインを含むため、飲みすぎには注意が必要です。夜間の眠りが浅い方や頻尿が気になる方は、夕方以降を水や麦茶、白湯などに替えるとよいでしょう。
カフェインを含む飲み物をすべて避ける必要はありません。本人の体調や睡眠への影響を確認しながら、量と飲む時間を調整してください。
スポーツドリンクや経口補水液は目的に合わせて使う


スポーツドリンクは汗をかいたときの水分・塩分補給に使えますが、糖分を含む商品が多いため、普段の飲み物として大量に与えるのは避けましょう。糖尿病や血糖値が高い方は、とくに飲む量へ注意が必要です。
経口補水液は、下痢や嘔吐、過度の発汗などによる脱水時に、水分と電解質を補うための飲料です。一般的なスポーツドリンクよりナトリウムやカリウムを多く含み、日常の水分補給には向きません。
消費者庁は、経口補水液について「日常的に飲んだり、大量に飲むと血圧や心臓に負荷がかかることが懸念されます」と注意を促しています。
参考:経口補水液について|消費者庁
持病や食事制限がある方は自己判断で飲ませず、医師や薬剤師、管理栄養士へ相談してください。
尿の減少や口の乾燥などを確認する
高齢者の水分不足は、本人がのどの渇きを訴えなくても進んでいる場合があります。尿の回数や量が減る、尿の色が濃くなる、口や舌が乾く、食欲が落ちるといった変化がないか確認してください。
口の乾燥は薬の副作用や口腔機能の低下でも起こります。ひとつの症状だけで判断せず、元気や食欲、ふらつきなどもあわせて確認しましょう。
ぐったりして水分を飲めない場合は医療機関へ相談する
ぐったりしている、吐き気がある、自力で水分を飲めないといった場合は、家庭での水分補給だけで様子を見ないでください。意識がはっきりしている場合は涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて体を冷やしながら、医療機関へ相談します。
環境省は、「水を自力で飲めない、または症状が改善しない場合は直ちに救急隊を要請しましょう」と案内しています。無理に飲ませると誤嚥するおそれがあるため、口から水分を与えず、救急車を呼んでください。
参考:熱中症になった時の処置|環境省
一人暮らしの親が急に倒れた場合に備え、連絡が取れないときの確認方法や相談先も決めておきましょう。


高齢者の水分補給に関するよくある質問
- 高齢者に水分を無理に飲ませてもよいですか?
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自力で飲める状態なら、少量ずつ勧めてください。むせる、飲み込みにくそうにする、意識がもうろうとしている場合は、無理に飲ませると誤嚥するおそれがあります。
自力で水分を飲めない、呼びかけへの反応がおかしい場合は、口から水分を与えず、すぐに救急車を呼んでください。
- 高齢者は夜にも水分補給が必要ですか?
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就寝中も汗や呼吸によって水分が失われるため、就寝前や起床後に少量の水分を取る方法があります。
ただし、夜間頻尿が気になる方や、心不全・腎臓病などで水分量を指示されている方は、自己判断で飲む量を増やさないでください。
- 経口補水液は毎日飲んでもよいですか?
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経口補水液は、普段の水分補給として毎日飲むものではありません。下痢や嘔吐、発熱、過度の発汗などで脱水状態になった際に、水分と電解質を補う目的で使います。
心不全や腎臓病、高血圧、糖尿病などがある方は、自己判断で飲まず、医師や薬剤師へ相談してください。
- 水分制限がある場合はどうすればよいですか?
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心臓病や腎臓病などで水分量を指示されている方は、一般的な目安よりも医師の指示を優先してください。
水やお茶だけでなく、みそ汁、ゼリー、果物、服薬時の水なども摂取量に含める場合があります。1日の上限や数え方がわからないときは、担当医や管理栄養士に確認してください。
まとめ|少量ずつこまめな水分補給で高齢者の脱水を防ごう
高齢者はのどの渇きに気づきにくいため、起床後や食事、入浴前後などに少量ずつ水分を勧めることが大切です。水や麦茶を基本にし、飲みにくい場合は好みの温度や汁物、果物、水分補給ゼリーも取り入れてみてください。
ぐったりして自力で飲めない場合は無理に飲ませず、医療機関への相談や救急要請が必要です。



尿の減少や口の乾燥、食欲低下などが見られたら、水分不足が進んでいないか確認しましょう。

