高齢の親の家を訪れたとき、「以前はきれいだったのに、なぜ掃除できなくなったのだろう」と心配になることがあるでしょう。
高齢者が掃除できない背景には、体力や筋力の低下だけでなく、腰や膝の痛み、認知機能や気力の変化など、さまざまな理由があります。
掃除をしないからといって、怠けていると決めつけず、本人が何に困っているのかを見ることが大切です。本記事では、考えられる5つの理由と、家族が確認したい生活の変化を整理します。

離れて暮らす親の部屋が急に汚れるようになった方は、掃除できない理由を一緒に確認してみてください。
すでに自力で掃除するのが難しく、家族だけでも対応できない場合は、高齢者向け掃除サービス5選|料金や介護保険の利用条件も解説も参考にしてください。利用できる支援や掃除サービスを比較しています。
高齢者が掃除できなくなる主な理由


高齢者が掃除できなくなる理由は一つとは限りません。体を動かす負担が増えたり、作業の手順を考えにくくなったりすると、以前と同じように掃除するのが難しくなります。
ここでは、考えられる主な理由を5つに分けて確認します。
筋力や体力が落ちて掃除そのものが負担になる


掃除は、掃除機を動かす、床を拭く、物を持って移動するなど、思っている以上に体を動かす家事です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、掃除や料理、洗濯などの家事は身体活動として扱われています。
体力が落ちていると、以前と同じ範囲を掃除するだけでも疲れやすくなります。掃除の途中で休むことが増えた、掃除する部屋が減ったといった変化があれば、体力面の負担も確認してみましょう。
参考:「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート|厚生労働省
腰や膝への負担から掃除を避けるようになる
掃除には、中腰になる、しゃがむ、立ち上がるといった動作が多くあります。腰や膝に痛みがある高齢者にとって、何度も姿勢を変える作業は負担になりやすいでしょう。
とくに、浴室やトイレ、床などの低い場所を掃除するときは、かがんだ状態で作業する場面が増えます。
以前は掃除していた場所だけ汚れるようになった場合は、やる気の問題と考える前に「この姿勢はつらくない?」「痛いところはない?」と聞いてみましょう。苦手になった動作がわかれば、家族が手伝う範囲も決めやすくなります。
認知機能の低下で掃除の手順や片付け方がわからなくなる


認知機能が低下すると、体は動かせても、どこから掃除するのか、何をどこへ片付けるのか判断しにくくなる場合があります。
厚生労働省は、認知症で本人が気づく変化について、
「今まで苦もなくやっていた家事や仕事がうまくいかなくなる」
と説明しています。
掃除道具を出しても作業を始められない、片付ける場所がわからず物が残るなど、以前とは異なる様子がないか確認しましょう。
ただし、掃除ができなくなったことだけで認知症とは判断できません。料理や買い物、金銭管理など、ほかの生活場面にも変化がないかを見ることが必要です。
気力が低下して掃除に取りかかれなくなる
体を動かせる状態でも、気力が落ちて掃除に取りかかれなくなることがあります。
掃除は、道具を準備する、片付ける順番を考える、作業する、終わったら道具を戻すといった複数の工程が必要です。気力や意欲が落ちていると、一連の作業を始めること自体がおっくうになる場合があります。
厚生労働省は、うつ病を疑う周囲から見た変化の一つとして「仕事や家事の能率が低下、ミスが増える」と示しています。
掃除だけでなく、趣味や外出、人との交流まで減っている場合は、普段の生活全体に目を向けましょう。
参考:うつ病を知る|厚生労働省
物が増えて自分では片付けきれなくなる
部屋に物が増えると、床や棚を掃除する前に、物を移動させる作業が必要になります。
収納場所がいっぱいになっている家では、物をどこへ戻すのか考えるだけでも作業が増えます。重い荷物を動かせない状態なら、さらに掃除しにくくなるでしょう。
以前と比べて床に物を置くことが増えた、テーブルや棚の上に物が積み重なっているといった変化があれば、掃除だけでなく片付けにも困っていないか聞いてみてください。
一度に全部片付けようとせず、本人が管理できる量や範囲から整える方法を考えましょう。



掃除できない背景には、体力、痛み、認知機能、気力、物の多さなどがあります。まずは本人がどの作業で困っているのかを確認しましょう。
急に掃除できなくなった場合は生活全体の変化も確認する


以前まで掃除していた高齢者が急にできなくなった場合は、部屋の汚れだけを見るのではなく、日常生活にも目を向けてみましょう。
掃除以外にも以前と違う様子が見つかれば、生活全体で支援が必要になっている可能性を考えるきっかけになります。
掃除以外の家事もできなくなっていないか確認する


掃除ができなくなったときは、洗濯、買い物、料理など、ほかの家事にも変化がないか確認してみましょう。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、掃除・洗濯・買い物・調理などは日常生活を支える「生活援助」としてまとめられています。
たとえば、洗濯物がたまる、以前より料理をしなくなる、買い物が難しくなるなど、複数の困りごとが重なっている場合は、掃除だけに対応しても生活上の不便が残ります。
生活全体で確認したいポイントは、高齢者の一人暮らしで困ることは?家族が確認したい生活の不安と対策でもまとめています。
本人を責めず困っていることを聞く


掃除していないことを注意するより、まず何が大変なのかを具体的に聞いてみましょう。
「掃除できないの?」と聞くのではなく、「掃除機は重くない?」「お風呂掃除はつらくない?」と作業を分けて尋ねると、困っている部分を把握しやすくなります。
掃除機は使えても床拭きは難しい、居間は掃除できても浴室は負担になるなど、作業によって差があることも考えられます。
本人がまだできる部分まで家族がすべて代わる必要はありません。何ができて、何に助けが必要なのかを一緒に確認しましょう。
以前と明らかに様子が違う場合は専門機関への相談も考える


掃除だけでなく、料理や買い物なども難しくなり、以前と比べて生活の様子が大きく変わった場合は、地域包括支援センターへの相談も選択肢です。
厚生労働省によると、地域包括支援センターは「地域の高齢者の総合相談」や介護予防に必要な援助などを行う機関です。
掃除ができない原因だけでは、どのような支援が必要なのか家族だけで判断しにくい場合があります。認知機能や体調の変化が気になる場合は、かかりつけ医への相談も検討してください。



掃除以外の家事にも変化が出ている場合は、生活全体を確認してください。家族だけで判断しにくいときは、地域包括支援センターなどへ相談できます。
自分で掃除するのが難しい場合は無理をさせない


自力での掃除が難しくなっているなら、以前と同じように本人だけで家中を掃除する必要はありません。
本人ができる範囲は続けてもらい、床掃除や浴室掃除など負担の大きい部分だけ家族が手伝う方法があります。家族だけでは対応できない場合は、外部サービスを利用するのも一つの方法です。
介護保険の訪問介護では、利用者本人の日常生活を支えるため、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助が提供されています。利用できるかどうかは本人の状態やケアプランなどによって異なるため、担当窓口で確認してください。
参考:訪問介護(ホームヘルプ)|介護サービス情報公表システム



掃除を続けること自体を目的にせず、本人が無理なく暮らせるよう、できない部分だけ家族や外部の支援で補いましょう。
高齢者が掃除できないときによくある質問
- 掃除しないのは認知症のサインですか?
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掃除ができなくなることは認知症で見られる変化の一つですが、掃除をしないことだけでは認知症と判断できません。厚生労働省は、以前できていた家事がうまくいかなくなることを認知症で本人が気づく変化の例として示しています。
料理や買い物、金銭管理、物忘れなどにも以前と違う様子がないか確認してください。
- 高齢の親が掃除を嫌がる場合はどうすればいいですか?
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無理に掃除させようとせず、何が負担になっているのか聞いてみましょう。
腰や膝がつらい、疲れやすい、片付ける場所がわからないなど、理由によって必要な手助けは異なります。本人ができる部分は残し、難しい作業だけ家族や外部サービスで補う方法があります。
- 掃除できないだけで介護が必要と判断できますか?
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掃除ができないことだけで要介護状態とは判断できません。
要介護認定では、認定調査や主治医意見書などをもとに、実際にどの程度の「介護の手間」が必要なのかを審査します。
掃除以外の家事や日常生活にも支援が必要になっている場合は、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターへ相談しましょう。
まとめ|掃除できない理由を確認して無理のない方法を考えよう
高齢者が掃除できなくなる背景には、体力の低下、腰や膝の負担、認知機能や気力の変化、物の多さなどがあります。
以前できていた掃除が難しくなったら、本人を責めるのではなく、どの作業に困っているのか確認してみましょう。
掃除以外の家事にも変化が出ている場合は、生活全体を見る必要があります。家族だけで対応するのが難しければ、地域包括支援センターや掃除サービスなども活用し、無理なく暮らせる環境を整えてください。



掃除できない理由を一つずつ確認し、本人の状態に合った手助けを選びましょう。

